第4話 決意

依頼者:なし
報酬:0c
作戦領域:廃墟ガレージ


 私はレイヴンだった。

 私はある巨大組織に与したレイヴンだった。

 だが私は組織を辞めた。

 別に裏切ったわけではないけど、あそこは私にとって何も得なかった。

 むしろ、失うものが大きかった。

 あの男は私にこう言った。

「お前では無理だ」

 あの時思えば、私は腹が立った。が、今はもうそんなことはどうでもいい・・・

 組織が、生きようが死のうが、私にはもうどうでもいい・・・

 これほど世界を絶望した瞬間は無かった。

 バーテックスとアライアンス・・・どちらが勝とうが、私には関係の無い話。

「世界が壊れようとも、消えようとも、私には・・・もうどうでもいい・・・」


セントラルオブアース・個人ガレージ

「ねぇ、私って才能・・・あったのかなぁ?」
 廃墟と化した古いACガレージに女は暗い表情を浮かべながら共に戦場を往来した愛機に語りかけていた。
 彼女の名は「ノエル・フォルトゥナス」・・・。一枚の白い羽を模った日時計の紋章が特徴の元レイヴン。・・・そう、彼女はアークに在籍したレイヴン“プリンシバル”、数時間前までは「アライアンス」という企業組織の戦術部隊で活躍していた。・・・が、今の彼女は、もはやレイヴンと呼ぶには難しいくらい落胆。
「意地悪ね、サンダイルフェザーは・・・。私ね・・・、復讐しようかなって今思ったの?アライアンスや隊長・・・“エヴァンジェ”に・・・」
 時間はまだ昼を迎えていない、それどころか太陽の光が小さい天井の穴からノエルのみ照らす。
「すいませーん」
 ノエルしかいない廃墟のガレージに元気な女の子の声が響いた。ノエルに声をかけた少女は、大きな目をキョロキョロとしながらノエルのACサンダイルフェザーを見つめた。
「やっぱり本物のレイヴンの乗るACは違うな・・・。細かい所までちゃんと手入れしてるなぁ」
「良かったらそのAC・・・あげようか?お嬢ちゃん?」
「いえ大丈夫です!こう見えてもAC乗りですから」
「ACに?お嬢ちゃんが?」
「はい!」
 ノエルは何かに憑りついたかのように笑い出した。少女は目が点になってしまい、固まった。
「わ、笑わなくても・・・」
「うふふふ、ごめんなさい。あまりにも素直だから、つい・・・」
「ついって?」
「・・・それで、私に何か御用?」
 すると少女は真っ直ぐとして目でノエルに一言ぶつけた。
「あたしと一緒に世界を周らない?」
「世界を?」
「そう!お姉さん、レイヴンでしょう?だから・・・」
「(この子といると何か気分が落ち着く・・・。この子が・・・私にツバサをもう一度・・・)」
 ノエルはそれまで、自ら拒絶していた「世界」にもう一度、翼を広げようとした。
「・・かいわよ?」
「え?・・・」
「私を雇うなら高いわよ?こう見えても、一流のレイヴンなんだからね?」
 少女は契約を結んだ。レイヴンと・・・
「私はプリンシバル、宜しくね?アリス?」
「何で、あたしの名前を?」
「・・・言ったでしょう?こう見えても一流のレイヴンだって・・・」

 一度は「世界」を捨て、「世界」を見限った翼は、再び「世界」へと羽ばたく・・・

 ジャック・Oの予告まで残り17時間――――


EXIT